金沢大学 ナノ生命科学研究所

宮田 一輝

原子間力顕微鏡による固液界面での原子レベルの構造とダイナミクスの可視化

宮田 一輝 金沢大学ナノ生命科学研究所 助教

固液界面に焦点をあてて

固体と液体の界面における異なる原子種の材料間の相互作用を深く理解することは、現代社会のインフラストラクチャーにおいて主要な役割を果たす。たとえば、防水服、住宅用のセルフクリーニング建材、自動車体の保護コーティングの開発に使用されるカギとなる技術は、固液界面の特性に関する原子レベルの明快な理解に基づいている。しかし、まだ完全な理解には至っていない多くの材料システム・現象がある:水和、結晶成長、および自己集合の物理化学;腐食と潤滑の産業的応用;そして生命科学における細胞膜とイオン輸送、等。このような背景のもと、宮田一輝助教は、さまざまな材料の固液界面をイメージングできるユニークな原子間力顕微鏡システム(AFM)を開発している。「走査型トンネル顕微鏡、誘導放出抑制顕微鏡法、極低温電子顕微鏡法は、発明者にノーベル賞が授与された発明です」と宮田助教は言う。「これらの機器は、表面科学と我々の原子世界の見方には革命的でした。 固液界面を可視化するための周波数変調AFM(FM-AFM)に関する私の研究は、このような形の技術の進化における最新の段階にあります。これは、学際的な研究のなかでも特にエキサイティングな領域です。」

 

液体環境用の周波数変調AFM

典型的なAFMシステムは、カンチレバープローブとスキャナーユニットを含むハードウェアと、スキャナードライバーなどのシステムを制御するためのアナログ回路で構成されている。AFMの液体への応用では、プローブの力を検出する速度、バンド幅、そして感度を大幅に改善する必要がある[1]。「金沢大学ナノ生命科学研究所WPIでのFM-AFMの重要な特徴は、固液界面をイメージングするためにユニークなデジタル回路を開発したことです」と宮田助教は説明する。「私は、リアルタイムで情報処理を可能にするフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)デジタル回路を開発しました。このコントローラでは300 kHzの帯域で「周波数シフト検出」を可能にします[2]。これらは、金沢大学で我々が開発したAFM技術の主要なイノベーションの例になります。」

開発した高速FM-AFMのセットアップ

 

高度な液中FM-AFM研究

ナノ生命科学研究所WPIで、宮田助教らによって開発されたFM-AFMシステムは、金属腐食や、脂質層と微小管などの生命科学、および水和構造と溶解などの物理化学の研究に使われている。最近の発見には、方解石(CaCO3、水にわずかに溶けるイオン結晶)の溶解の高速FM-AFMイメージングがあり、その画像取得速度は2.0秒/フレーム(従来型のFM-AFMでは50秒/フレーム)であり、 溶解過程における中間状態を表す遷移領域の存在を示している[3]。FM-AFM測定によって得られた実験結果とシミュレーションより、新たな固液界面の原子スケールのモデルを提案した。

(上)方解石の水への溶解の高速FM-AFM画像。(下)ステップ端にCa(OH)2層がある水中の方解石(10-14)表面の分子動力学(MD)シミュレーションモデル。

 

ナノ生命科学研究所WPIでのFM-AFMのためのプラン

「通常、私は自分のスキルを二つの領域に分けます」と宮田助教は言う。「工学とAFMです。前者は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)の設計、LabVIEW、Python、Cなどを使用したプログラミングの専門知識によるものです;機械部品および電気回路の設計;そして有限要素シミュレーションになります。後者は、液体中の原子および分子レベルの分解能のイメージングのためのFM-AFM制御における長年の経験で構成されています;FM-AFMのすべてのコンポーネントに関する深い知識;そして実験と数学的シミュレーションの結果を比較するための分析スキルです。私は、これらすべてのスキルを活用して、「原子および分子レベルでの生物学的現象のメカニズムを解明する」ための3D-AFMプラットフォームを開発することを計画していますが、それは、つまり当研究所のミッションと合致します。」

生物学的試料用の高速3D-AFMの開発において取り組むべき特段の課題は、高速FM-AFM、新しいスキャナーユニットと大規模データ記録システム、および高さ位置制御システムなどの統合の必要性である。

References

  1. K. Miyata et al., “Improvements in fundamental performance of liquid-environment atomic force microscopy with true atomic resolution”, Jpn. J. Appl. Phys. 54, 08LA03, (2015).
  2. K. Miyata et al., “Quantitative comparison of wideband low-latency phase-locked loop circuit designs for high-speed frequency modulation atomic force microscopy”, Beilstein J. Nanotechnol. 9, 1844, (2018).
  3. K. Miyata et al., “Dissolution Processes at Step Edges of Calcite in Water Investigated by High-speed Frequency Modulation Atomic Force Microscopy and Simulation”, Nano Lett. 17, 4083, (2017).

 

Further information

宮田 一輝(Kazuki Miyata)
https://researchmap.jp/miyata_k (researchmap)

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