研究施設

ナノ生命科学研究所の研究環境整備は、2017年10月の設立直後から順次、他に先んじて進められました。大学の既存施設の大幅改修によって、研究者が互いに行き来しやすい環境を整え、それにより、多様な融合研究を生み育んできたのです。

しかし、研究交流スペースの不足や、実験設備の分散、研究室単位で閉じない開放的な研究スペースの不備など、解決すべき課題もまだ残されていました。

こうした課題をすべてクリアしたのが、2020年9月に完成したナノ生命科学研究所新棟です。NanoLSIが目指す、生命科学の「未踏ナノ領域」開拓には、これまでになかった観点からの研究融合が不可欠です。異分野の研究者が一つの建物に集結するアンダーワンルーフ型の研究棟は、まさにNanoLSIに必須の研究環境だと言えます。

Research under one roof

新研究所棟は、研究面で緊密に連携するがん進展制御研究所と理工研究域の近接点となる角間キャンパス南地区にあります。基本コンセプトは、「ひとつ屋根の下の研究」。研究室単位で区切られるような、これまでの組織構造を持たない、学際的で開放的な研究室環境を実現しています。各フロアには、研究テーマに応じて最適化された設備と環境を用意しました。誰もが、どこででも、自分の研究を進められる、そんな研究環境です。

NanoLSIの研究には,がん進展制御研究所(CRI),理工研究域との連携が不可欠です。そこで,それぞれの建物を渡り廊下で連結しました。NanoLSI・CRI・理工研究域は,緊密に連携し,一体となって研究を進めていきます。

NanoLSIの研究の中核となるのは,走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscopy(SPM))技術です。SPMは,タンパク質や細胞の動態を液中で染色することなくナノスケール,つまり原子・分子サイズの分解能で観察できる現時点で唯一の顕微鏡であり,NanoLSIではその最先端技術を独自に開発しています。

ナノスケールでのSPM観察は,振動や温度など外部からの影響を非常に受けやすいため,研究環境の整備には細心の注意を払う必要があります。また,観察する試料に合わせて管理・調整する必要もあります。新研究棟は、こうした必要に応える設計としました。建物全体には徹底した除振対策を講じ,さらに,振動に強く温度変化の少ない安定した環境の地下1階に,開発中の最新機から共同研究プログラムで共用する顕微鏡まで,多様なSPMを設置・調整することができる実験室を整備しました。ここにSPMを集中的に配置し,さらに,SPMの開発に用いる電子顕微鏡(EM)室も同一エリアに整備しています。

ひとつ屋根の下で、融合研究を生み、育み、成果につなげる。新研究棟は、まさに世界トップレベル研究拠点に相応しい、世界最高水準の研究環境を提供するものです。