掲載日:2023.04.28 ニュース
安藤敏夫特任教授(金沢大学特別功績教授)が紫綬褒章を受章
令和5年春の褒章において、金沢大学ナノ生命科学研究所の安藤敏夫(あんどうとしお)特任教授(金沢大学名誉教授、金沢大学特別功績教授)が紫綬褒章を受章しました。
紫綬褒章は、科学技術分野における発明・発見や、学術およびスポーツ・芸術文化分野における優れた業績を挙げた方に贈られます。安藤特任教授は高速原子間力顕微鏡の開発が評価され、受章に至りました。
生命現象を担う生体分子が機能を発揮する仕組みを理解するためには、機能中の個々の分子の構造と動的挙動を直接観察することが最も有効ですが、X線結晶構造解析、電子顕微鏡、蛍光顕微鏡といった従来技術ではそのような観察は不可能でした。一方、原子間力顕微鏡(以下「AFM」という。)は、生理環境下にある生体分子の構造をナノメータースケールで可視化できますが、画像取得に数分かかるため、動く試料を観察することはできませんでした。
安藤特任教授は、AFMの高速化を実現するために、高速スキャナー、振動抑制技術、高速フィードバック制御技術など様々な要素技術を開発し、生体試料への低侵襲性を維持しつつ百ミリ秒以下で分子動画像を取得できる高速AFMの開発に成功しました。この開発により、機能中の個々の生体分子の姿と動的な挙動を直接可視化することを初めて可能にし、生体分子の機能発現機構の詳細理解への道を拓きました。
高速AFMは製品化され、国内外で広く利用されています。その範囲は基礎生命科学分野だけに留まらず、液中のナノメータースケールで起こる物質の動的現象の観察が必要な医薬品、半導体、洗剤、電池などの産業分野でも利用され始めており、国民生活の向上に寄与する製品開発にも貢献しています。